バイオ炭化素材の循環は
地球温暖化の対策に
有効な施策として認定
今、大気中のCO2を削減する方法として、バイオ炭の農地施用による炭素の土壌貯留が注目されています。
バイオマスを炭化することで炭素をバイオ炭の中に残す。
炭素は分解されずに残り、それを炭素の貯蔵としてみなすことで、大気中で循環する炭素を削減する。
それがバイオ炭が地球環境に与える影響です。
生物が生きる過程で
体組織に炭素を貯蔵する
バイオマスとは、生物由来の有機物資源を指します。生物は成長の過程で体組織を形成しますが、その組織には多くの炭素が含まれています。たとえば植物は、空気中の二酸化炭素を吸収し、光合成によって炭水化物を生成します。その炭水化物を用いて体組織を構成し、成長していくのです。
このように、生物が成長する過程で、炭素は体組織に固定されていきます。つまり、炭素は成長そのものの構成要素とも言えます。しかし、生物が死を迎えると、その体組織は微生物によって分解され、その過程で二酸化炭素が大気中に放出されます。さらに、腐敗などの条件が整うと、より強い温室効果を持つメタンなどが発生することもあります。
バイオ炭は、このような炭素の循環を遮断し、炭素を長期間にわたって貯蔵する手段として注目されています。本来であれば微生物によって分解されるはずの体組織を炭化することで、分解されにくい難分解性炭素に変えるのです。難分解性炭素は非常に安定しており、土壌中であっても数十年から数千年もの間、土壌中に残り続けるとされています。
このようなプロセスを通じて、本来なら大気中に放出されていたはずの二酸化炭素を土壌に閉じ込めることができるため、バイオ炭化素材は脱炭素および地球温暖化対策に貢献すると考えられています。


国の制度・世界の報告書でも
取り上げられる「バイオ炭」
バイオ炭が炭素を貯蔵するということ、脱炭素に寄与するということは正解的に認められています
IPCC報告書に記載されるバイオ炭
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動に関する科学的知見を評価し、定期的に報告書を発信している政府間組織です。これらの報告書は、さまざまな気候変動シナリオの基礎資料として活用されています。
その中の「2019年改良IPCCガイドライン」では、「バイオ炭による有機炭素蓄積量」という項目が設けられ、バイオ炭の製造方法の定義や、炭素貯蔵量を測定するための考え方が示されています。さらに、IPCC 1.5℃特別報告書のQ&A集には、植物をバイオ炭に変換し、土壌に埋設することで、数十年から数世紀にわたり炭素を大気から隔離して保管できることが記載されています。
このように、バイオ炭は国際的にも認められた炭素貯蔵技術の一つであると言えます。
J-クレジットにおけるバイオ炭
日本のカーボンクレジット制度であるJ-クレジットにおいては、2020年9月30日付で、バイオ炭がクレジット創出の方法論として正式に認められました。
炭素残存率の計算や算定方法については、IPCC報告書および日本の温室効果ガスインベントリ報告書に基づくことが求められています。クレジットとして認証されるのは、農地にバイオ炭を施用した際の炭素貯蔵量です。その際、運搬などに伴う炭素排出分を差し引いた値が、実際のクレジット量として認められます。


バイオ炭化素材の
活用方法
バイオ炭素の活用可能性は、気候変動に関するレポートやJクレジット制度で定義されている農地への施用にとどまりません。現在、バイオ炭素は農業分野以外でも注目を集めており、たとえば製鉄業においては、石炭の代替として利用されるバイオコークスの加炭材としての活用が進められています。これにより、従来の化石燃料を使用した工程の一部を再生可能資源に置き換えることが可能となり、産業分野での脱炭素化にも貢献すると考えられています。
さらに、近年では炭素を原料とする製品への応用についても関心が高まっています。バイオ炭素を素材として利用することで、環境負荷の低い製品開発を目指す動きが広がっており、建築資材や土壌改良資材、あるいは脱臭・吸着用途など、機能性を生かした製品への展開も期待されています。このように、バイオ炭素は環境技術の一部としてのみならず、循環型社会の構築に貢献する多用途な資源としての価値を持ち始めています。
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