気候変動レポートより ①IPCC報告書とは

グローバル化が進む現代において、企業を取り巻く経営環境は日々変化しています。その中でも、避けて通ることのできない喫緊の課題となっているのが「気候変動」です。
パリ協定以降、世界の温室効果ガス排出量削減目標はますます野心的になり、各国政府は具体的な施策を打ち出し、企業に対してもサプライチェーン全体での排出量削減や、より積極的なサステナビリティ経営への取り組みを強く求めています。

そのような中で、私達はバイオ炭素資源の有用性について多くの方に知っていただく為の取り組みをしています。世界的な気候変動の中でも注目すべきレポートの一つにIPCC(気候変動に関する政府間パネル)があります。その内容について解説をしてまいります。


  1. IPCCについて 世界中が参照する気候変動レポート《今回》
  2. IPCCの役割と最新報告書AR6が示す現実《今回》
  3. IPCCが注目する「炭素除去(CDR)」とバイオ炭の科学的根拠
  4. 今後の展望 – AR7サイクルとバイオ炭研究の進化
  5. 総論:IPCCの知見を力に – バイオ炭で拓く企業のサステナブルな未来

1.IPCCについて 世界中が参照する気候変動レポート

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動に関する科学的知見を評価し、定期的に報告書を発信している政府間組織です。これらの報告書は、さまざまな気候変動シナリオの基礎資料として活用されています。

グローバル化が進む現代において、企業を取り巻く経営環境は日々変化しています。その中でも、避けて通ることのできない喫緊の課題となっているのが「気候変動」です。パリ協定以降、世界の温室効果ガス排出量削減目標はますます野心的になり、各国政府は具体的な施策を打ち出し、企業に対してもサプライチェーン全体での排出量削減や、より積極的なサステナビリティ経営への取り組みを強く求めています。

このような状況下で、企業の気候変動対策は単なるCSR活動の枠を超え、事業継続や企業価値向上に直結する重要な経営課題となっています。従来の「排出量を減らす(緩和)」努力に加え、大気中のCO₂を直接回収・固定する「炭素除去(CDR: Carbon Dioxide Removal)」という新たなアプローチが、温暖化目標達成のために不可欠であるという認識が高まっています。

では、企業はどのようにこの複雑かつ重要な課題に取り組んでいけば良いのでしょうか。その指針の一つが、気候変動に関する科学的評価を提供する世界で最も権威ある組織、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書です。IPCCの示す科学的知見は、国際的な政策決定や各国の戦略立案の基盤となっており、企業の気候変動対策を検討する上でも、その示唆するところを理解することは極めて重要です。

2.IPCCの役割と最新報告書AR6が示す現実

まず、IPCCとはどのような組織であり、なぜその報告書が世界的に重要視されるのかを確認しましょう。

IPCCは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された国際機関です¹。その唯一の目的は、政策決定者に対して気候変動に関する科学的評価を提供することにあります。IPCC自身が研究を行うわけではなく、世界中の科学者が発表した膨大な研究論文を評価・統合し、気候変動の科学的根拠、その影響とリスク、そして適応策と緩和策に関する「政策に関連する、しかし政策を規定しない」科学的評価報告書を作成しています。

IPCCは195の加盟国で構成されており、各国政府の代表者が総会に集まり、組織の運営や科学的活動に関する決定を行います。この政府主導の性質が、IPCCの評価が世界中の政府のニーズや優先順位に沿ったものとなり、政策決定において高い関連性を持つことを保証しています。

IPCCは定期的に「評価報告書(Assessment Report: AR)」を発表しており、現在最も新しいのが2023年3月に統合報告書が発表され、サイクルが完了した「第6次評価報告書(AR6)」です。AR6サイクルでは、各作業部会から個別の報告書が発表されました。

AR6報告書が提供する科学的知見は、現在の気候変動の状況と、私たちが直面している課題の大きさを正確に理解するための不可欠な情報です。そして、特にWGIII報告書は、企業が今後どのように排出量を削減し、あるいは大気中のCO₂を削減していくべきかについて、科学的な根拠に基づいた多様な選択肢を提示しています。日本においても、これらの主要な報告書やSPMは関係省庁を通じて日本語訳が提供されており、最新の科学的知見へのアクセスが保証されています。

企業の気候変動対策を担当される皆様にとって、IPCCのAR6報告書は、自社の戦略を科学的な根拠に基づいて構築するための強力な羅針盤となるのです。


気候変動レポートより

1.IPCCについて 世界中が参照する気候変動レポート《今回》
2.IPCCの役割と最新報告書AR6が示す現実《今回》
3.IPCCが注目する「炭素除去(CDR)」とバイオ炭の科学的根拠
4.今後の展望 – AR7サイクルとバイオ炭研究の進化
5.総論:IPCCの知見を力に – バイオ炭で拓く企業のサステナブルな未来